MONKEYが打ち出される確率
キーボードをランダムに叩いて特定の文字列ができる確率もスロットの目が出る確率と同様に考えることができます。キーの数が100個のキーボードで考えてみましょう。このキーボードで任意の1文字が打ち出される確率は 1/100 となりますから、m 文字の文字列が打ち出される確率は 1/100m となります
実際にこのキーボードを使ってMONKEY という文字列ができる確率を求めてみましょう。MONKEY は6文字ですからこの文字列ができる確率は 1/1006 ですから1兆分の1となります。
仮に1秒で6文字を打ち出すとすると、すべての組み合わせを打ち出すのに1兆秒、3万年以上かかります。たった6文字の単語でも3万年に1度出るかどうかの確率です。
この確率は単語の文字数が大きくなるほど小さくなります。8文字になると確率が1京分の1で3億年に1度、9文字になると 100京分の1で 300 億年に1度です。
宇宙の誕生は今から約 137 億年前と考えられていますから、9文字の文字列を打ち出すのは宇宙の歴史を2回繰り返しても出る可能性のない極めて小さい確率です。
俳句が打ち出される確率
実際に意味のある文章が打ち出される確率を考えてみましょう。まずは世界でもっとも短い詩である五・七・五の文字列からなる俳句について考えます。ひらがな 50 文字を打つことができるキーボードを使うと、俳句の組み合わせは 5017 通りとなります。これは7の後ろに0が 28 個も続く大きな数字です。松尾芭蕉の「ふるいけや かわずとびこむ みずのおと」や与謝蕪村の「なのはなや つきはひがしに ひはにしに」という俳句ができる確率は 1/5017であり極めて小さい値となります。もし1秒間に1文字打ち出すとすると、ある俳句が打ち出されるまでにかかる平均時間は2.4×1016年となります。
シェークスピアの作品が打ち出される確率
シェイクスピアの作品が打ち出される確率はどうなるでしょうか。大文字・小文字の区別がないアルファベット 26 文字で考えてみましょう。たとえば「ハムレット」に出てく「To be, or not to be: that is the question.」という有名な台詞はスペースとカンマとコロンとピリオドを除くとちょうど 30 文字あります。この台詞ができあがる確率は 1/2630 となります。
MONKEYと同様に100個のキーボードで打ち出される確率を考えると 1/10030 になってしまいます。10030 は1の後ろに 60 個も続く大きな数字です。いずれにしても作品の文章すべてが打ち出される確率は極めて0に近い値であることは容易に想像できます。確率は0ではありませんがその事象が起きる可能性はほとんどないと言えるでしょう。
猿とキーボードを増やす
「無限の猿の定理」の意味を考えると理論的には十分 に長い時間をかけるとシェイクスピアの作品がいつかは打ち出されることになります。ここでもう一度、MONKEYを打ち出す実験を考えてみましょう。キーが100 個のキーボードで MONKEY が打ち出される確率は1兆分の1でした。そして、1秒間に6文字打ち出すとしたら、すべての組み合わせを打ち出すのに1兆秒かかる結果となりました。それでは猿を1兆匹、キーボードを1兆台用意していっせいにキーボードを打ち始めたらどうなるでしょう。
理論的には1秒後にどれか1匹の猿が MONKEY を打ち出しているはずです。数秒後、1分後はどうでしょうか。MONKEY という文字列が打ち出される確率はさらに高まるでしょう。このような事情が起きやすくなる条件は理論的にはいくらでも設定することが可能です。しかし、現実離れした条件を設定した場合、実際に確かめる術はありません。
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