.Header .description 2-10. √2は直線上に目盛りをつけられるか|思考実験の科学史

2-10. √2は直線上に目盛りをつけられるか

直線上に有理数の目盛りをつける

 直線に数を対応させて表したものを数直線といいます。身の回りの道具で言えばものさしが数直線を利用したものです。それでは目盛りがついていない直線に等間隔で目盛りをつけるにはどのようにしたら良いでしょうか。例えば、直線の長さを1とすると1の長さを n 等分することによって直線上に 1/n ごとに目盛りをつけることができるでしょう。1/n の m 倍の m/n ごとに目盛りをつけることも可能でしょう。

直線に目盛りをつけて数直線にする
直線に目盛りをつけて数直線にする

 ここで m/n は分数ですからこの目盛りは有理数でつけられていることになります。そして、n を大きくすると目盛りを細かく刻むことができます。ですから直線には有理数の目盛りを無限につけることができます。

直線上に平方根の目盛りをつける

 直線が数で隙間無く埋め尽くされた状態を稠密と呼びますが、直線を有理数の目盛りで埋め尽くしても、この直線上には無理数を表す目盛りはありません。つまり、有理数だけでは全ての数値を直線上に埋め尽くすことはできません。たとえば有理数で作った目盛りでは √2 や √3 を示すことができません。それでは直線上に √2 の目盛りをつけることができないかというとそれは可能です。1辺の長さが1の正方形の対角線の長さを使うと √2 の目盛りをつけることができます。さらに √3 や √5 などの目盛りをつけることも可能です。

 ヒッパソスが見い出した数と数の比で表せない数とは √2 のことですが、√2 そのものはヒッパソスが発見したわけではありません。紀元前 2 千年のメソポタミアで栄えたバビロニアの遺跡から発掘された石版にその近似値が六十進法で記述されています。また古代の人々はロープを使って次のオ図のような手順で平方根を作図できたと考えられます。

直線上に平方根の目盛りをつける
直線上に平方根の目盛りをつける

代数的無理数とは

 平方根のような無理数を代数的無理数といいます。代数的無理数は次のように n 次方程式の解となります。

 代数的無理数は平方根だけではありませんが直線上に目盛りをつけることができます。


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