.Header .description 2-18. 矢|ゼノンのパラドックス|思考実験の科学史

2-18. 矢|ゼノンのパラドックス

矢とは

 第3のパラドックスは飛んでいる矢は飛んでいないというものです。放たれた矢が的を射止めるのを見て誰しもが矢が飛んでいる現実を認めるでしょう。

放たれた矢が的を射る
放たれた矢が的を射る

 しかし、ゼノンは飛んでいる矢を見せておきながら「飛んでいる矢は飛んでいない」と結論づけ矢の運動を否定します。

 飛んでいる矢はある時間にある空間に存在する。矢はある時間にある距離を移動するが時間を分割していくと矢の移動距離も短くなくなっていく。そのため無限に分割した時間においては矢はその空間で静止していることになる。同じ理屈で矢は次の時間においても次の空間で静止していることになる。このように考えると、矢はどの時間においても飛んでいないことになり、飛んでいる矢は飛んでいないという結論に達し、矢の運動が否定される。

 すべての物体は動いているか動いていないかの状態にあるとしましょう。物体がそこに存在するということは、物体がそこの空間を占めているということです。一方、物体が運動するということは、物体がある時間に存在している空間から、次の時間に存在する空間に移動するということです。

ゼノンの主張

 ゼノンはこのパラドックスにおいても自分が真と考えている「物体は運動しない」を否定し「物体は運動する」を真の命題とします。そして、時間と空間が無限に分割できると仮定して物体の運動しないと結論づけています。

 二分割は空間のみを無限に分割することによって生じる矛盾から運動を否定するパラドックスでした。アキレスと亀は時間を分割することは明示的に示されていませんでしたが2つの物体の運動を使って運動を否定するパラドックスでした。それに対して矢は明示的に空間と時間を無限に分割したときに生じる矛盾から運動を否定しています。なぜ空間と時間を分割しているのに運動を否定することができるのでしょう。


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