.Header .description 3-11. 薄い膜で色づく光|思考実験の科学史

3-11. 薄い膜で色づく光

光の干渉

 シャボン玉の表面や油膜が虹のように色づく現象は古くから知られていました。これらは光の波と波が重ね合わさったときに生じる干渉という現象によるものですがその原理はよくわかっていませんでした。

シャボン玉の表面に現れる色
シャボン玉の表面に現れる色

 フックは「ミクログラフィア」において2枚のガラス板を重ねたとき虹のように色づいた同心円状の環が生じる現象を報告しています。この環がどうして生じるのかはニュートンが詳しく調べています。そのためこの環はニュートンリングと呼ばれるようになりました。

 ニュートンリングはレンズの内部で反射する光とレンズを通り抜けてガラス板で反射する光が干渉することによって生じます。

ニュートンリング
ニュートンリング

 干渉とは複数の波が重ね合わさるとき波が強め合ったり、弱め合ったりする現象です。音波の場合、波の山と谷が重なるところでは波が弱め合うので音が小さくなり、波の山と山が重なるところでは波が強め合うので音が大きくなります。光が波とすると、波の山と谷が重なる条件では光が暗くなり、波の山と山が重なる条件では光が明るくなります。現在では、ニュートンリグは光の波の干渉で生じることがわかっています。なお、ニュートンリングのような干渉で生じる縞模様を干渉縞といいます。

波の干渉
波の干渉

ニュートンの干渉の説明

 ニュートンはニュートンリングの仕組みを探るため白色光ではなくプリズムで取り出した特定の色の光(特定の波長の光、単色光)だけで実験を行いました。すると虹色の環はできませんでしたが、光の色の明暗が規則的に変化した環が生じました。ニュートンはこの現象を詳しく調べ明暗の間隔がレンズとガラス板の隙間の距離によって決まることを突き止めました。

  ニュートンがこの現象を詳しく調べたのは、この現象が自説を危うくする可能性があると考えたからに違いありません。しかし、ニュートンはこの現象を説明するのにずいぶん苦労したようです。

 最初に解決しなければならなかった大きな問題点は、粒子であるはずの光が透明な物質を進むときに、透過したり、反射したりするのはなぜかということでした。粒子は2つに分離するはずがありませんから同じ条件下では透過するか反射するかのどちらかでしかないはずです。

 そこでニュートンは、この現象は光を伝える媒質の密度が変化するために生じると考えました。そして、光は媒質が希薄なところでは透過し、濃厚なところでは反射すると説明し、その状態の変化を、光の透過と反射の「発作」と表現しました。透過の発作が起こる条件のとき光の粒子は透過し、反射の発作が起こる条件のとき光は反射するため干渉縞が生じると説明したのです。

 ニュートンはニュートンリングの現象を説明するために、光を伝える媒質の影響を持ち出しています。光が伝わるのに媒質が必要としてしまうと、光が粒であることを覆し、光が波であることを肯定することになってしまいます。しかし、ニュートンは都合の悪い説明を絶妙に回避してニュートンリングの仕組みを説明したのです。


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