.Header .description コラム ニュートンの粒子説による光の直進と反射・屈折を考えてみる|思考実験の科学史

コラム ニュートンの粒子説による光の直進と反射・屈折を考えてみる

光の粒子の水平投射

 ニュートンの時代には光が直進するというのは紛れもない実験事実でした。しかし、もしニュートンが主張する通り光が弾丸のような粒子であれば、光の粒子はニュートン力学に従って重力に引かれて落下しながら進むことになります。この点についてどのような反論ができるでしょうか。

 初速V0の弾丸が水平に飛び出したときの運動(水平投射)は次の図のようになります。空気抵抗はないものと考えましょう。

水平投射
水平投射

 秒速30万キロメートルの光の粒子が x だけ進んだときに y がどれぐらいになるかを求めてみましょう。図中の2つの式から y=1/2 gt2 に t=x/v0 を代入すると、

 y = 1/2 g (x/V0)2

が得られます。

 x を 1 km (1000 m)とすると、 

 y = (1/2 )(9.81)(1000/300000000)2 = 5.45×10-11 m

が得られます。

どれぐらい落下するのか

 5.45×10-11 m は 54.5 pm (ピコメートル:1 pm = 1 兆分の 1 メートル)です。水素原子の大きさはだいたい 100 pmですから、この値は水素原子の半径よりやや大きいぐらいです。10 km先でも 5 nm(ナノメートル:1 nm = 10 億分の 1 メートル)しか落下しません。つまり、光はものすごく速いのでほとんど落下しないと言えるわけです。

 ニュートンの時代には光の粒子が落下するのかしないのかを観測する術はありませんでしたから計算による思考実験しかできません。直感的にも重力の影響は考えなくても良いと結論づけられたことでしょう。

  ニュートンの反論は「光は弾丸のような粒子であっても速度が非常に大きいので直進する」ということになります。

光の粒子説による反射の説明

 光が鏡のような平面で反射するとき入射角と反射角は常に同じ角度になります。この関係を光の反射の法則といいます。

光の反射の法則
光の反射の法則

 ボールを高速で壁にぶつけると、ボールは入射角と反射角が等しくなるように反射しま。この日常的に経験する現象は力学的に説明することができます。光の粒子の反射もボールと同様に力学的に説明することが可能です。

光の粒子説による反射の説明

 光は空気中から水中に進むとき境界面に垂直に入った光はそのまま直進しますが、斜めに入った光は進む向きを変えます。この現象を光の屈折といいます。光が屈折する角度を屈折角といい、屈折する割合を屈折率といいます。光は屈折したあとも直進します。

光の屈折
光の屈折

 光が屈折率の小さい物質から大きい物質に入るときには、屈折角は入射角よりも小さくなります。ニュートンはこの現象について光の粒子が水中に入ったときに下向きの力を受けるため屈折角が入射角より小さくなると説明しています。ニュートンの粒子説では、水中での光の粒子の速さは下向きをの力を受けるため空気中より速くなります。しかし、当時は水中の光速を測定する術はありませんでした。


前ページ:3-16. ニュートンの粒子説が主流に

前ページ 次ページ 目次

次ページ:3-17. 光の回折と干渉を実証したトマス・ヤング


0 件のコメント:

コメントを投稿