パルメニデスを擁護したゼノン
パルメニデスの養子にエレアのゼノンという哲学者がいました。ゼノンはパルメニデスの弟子でもあり愛人であったとも言われています。
ゼノンはパルメニデスの世界の成り立ちは変化ではなく存在で捉えるべきという思想が世の中で受け入れられないことを嘆き、師を擁護するために師の思想の異論に反論するための論法を考えました。
パルメニデスを擁護したゼノン
ゼノンが考え出した論法を背理法といいます。背理法は相手が真とする命題をひとまず真と仮定して論理を展開し、真と仮定したことによって生じる矛盾を導き出すことによって相手の命題が成り立たないことを証明する方法です。
自分が真とする命題を証明する立場で考えると、自分の命題を否定することを真と仮定することにより導き出される矛盾を示すことによって、自分の命題が真であると結論づけることになります。
クモは昆虫か
背理法を使ってクモは昆虫の違いについて考えてみましょう。昆虫とクモは節足動物の仲間ですが、昆虫は節足動物昆虫類、クモは節足動物クモ類に属します。クモが昆虫ではないことを背理法で証明してみましょう。
まず「クモは昆虫ではない」の否定である「クモは昆虫である」を真の命題として次のように論理を展開します。
- クモは昆虫であると仮定する
- 昆虫の体は頭部・胸部・腹部の 3 つから成り足の数は 6 本である
- クモの体は頭部・腹部の 2 つから成り足の数は 8 本である
- クモの体の構造と足の数は昆虫と矛盾する
- この矛盾はクモが昆虫であると仮定したから生じたのである
- よってクモは昆虫ではない
このようにクモと昆虫の構造を比較すると矛盾が生じることから「クモは昆虫である」という仮定が成り立たないことになり「クモは昆虫ではない」を証明することができます。
この結果を踏まえて昆虫とクモの足の数について次のような証明はできるでしょうか。
- クモは足が8本ある
- 昆虫はクモではない
- よって昆虫の足は8本ではない
結論から言うとこれは証明はできません。昆虫をタコに入れ替えてみてください。タコは昆虫ではありませんが足は8本あります。
このように条件の設定や手順を間違えると証明ができなくなります。また命題と条件によっては目的の証明ができずに迷宮入りしてしまう可能性もあります。背理法を使うときにはこのような状況に陥らないように注意する必要があります。
ゼノンはパルメニデスの思想が正しいことを証明するために、師の思想に反する空間や時間の分割と物体の運動を真であると仮定しました。そして、その仮定から導き出される矛盾を示し、空間や時間の分割と物体の運動を否定しようとしました。彼はこの証明のために「二分割」「アキレスと亀」「矢」「競技場」という4つのパラドックスを使いました。これらをゼノンのパラドックスといいます。
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