.Header .description 3-06. 光の正体の探究のはじまり|思考実験の科学史

3-06. 光の正体の探究のはじまり

光速の測定の限界

 レーマーやブラッドリーによって光は瞬時に空間を伝わるのではなく光速は有限であることがわかりました。しかしながら、光がどのような原理で空間を伝わるのかは謎のままでした。

  天体の運動を利用した光速の測定方法は測定条件を変えることができません。もし人間が地球上で制御可能な距離を使って光速を測定することができたら、光が空間をどのように伝わるのかを詳しく調べることができるようになり、光の正体が何かという答えに近づくことができます。

 海洋クロノメーターの発明により光速の測定の目的は地図の作成から光そのものの科学的探求になりましたが地上の距離で光速を測定するためには精巧な装置の開発が必要でした。しかしながら地上で光速が測定できるようになったのは19世紀に入ってからです。

 光の正体の探究は光速の測定以前の古代から行われていました。科学や技術が未発達な時代でも科学者達は光の様々な現象から思考実験と現物実験を繰り返しながら科学的知見と新技術を積み重ねたのです。光の正体の解明の歴史を振り返っておきましょう

古代の人々にとっての光

 世界中の多くの神話に太陽を神格化した創世の神が登場することからわかるように、古代の人々は光は世界をつくる基本的なものと考えていました。古代の人々にとって光は身近な存在でありながら神格化するほど畏れ多い存在であり、その解釈は神学的で宗教的なものだったのです。

エジプトの太陽神ラーと日本の天照大神
エジプトの太陽神ラーと日本の天照大神

 光の正体について科学的な立場で合理的に説明できる答えを求めた先駆者は古代ギリシアの哲学者たちです。彼らは光が直進・反射・屈折することや、ピンホール現象で物体の像ができることなどを発見しています。また、ものが見えるという観点から光がどのように空間を伝わるのか、なぜ色が生じるのかなどの探究を行いました。しかし、当時の科学・技術ではそれらの現象から光の正体を突き止めることはできなかったのです。

【参考記事】


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