この世界はなにからできているのか
テセウスの船のパラドックスは、物体を作るすべての材料が完全に入れ替わったとき、その物体は過去の物体と同じものと言えるのだろうかという問いを投げかけています。物体の材料を次々と入れ替えていくわけですから、物体は材料を入れ替えるたびに絶えず変化していることになります。
物体が何からできているのかという問いはやがて世界はどのようにできているのかという視点に広がりました。そして哲学者たちはこの世界が変化しているのかどうかを論じるようになりました。
ヘラクレイトスの川 同じ川には二度と入ることができない
イオニアの都市エペソスのイオニア学派のヘラクレイトスは万物は流転し世界は絶えず変化していると唱えました。ヘラクレイトスが唱えた「万物は流転する」はギリシャ語でパンタ・レイといいます。
プルタルコスによればヘラクレイトスはパンタ・レイの説明の事例として「同じ川には二度と入ることはできない」と述べています。今日も昨日も川には水が絶えず流れていますが、きょうt昨日と今日とでは流れている水が異なります。そういう意味で昨日の川と今日の川は見た目は同じでも違う川だと考えたのです。今日と昨日どころか1秒前と1秒後の川に流れている水は異なるのだからもはや同じ川ではないということです。このことからヘラクレイトスは「同じ川には二度と入ることができない」と述べています。そして世界は川と同じように絶えず変化しながら同じ姿を保っていると唱えたのです。
ヘラクレイトスの考えをもとにテセウスの船を考えてみると、材料を取り替えた船はもはやテセウスの船ではありません。船は絶えず変化しながら同じ姿を保っているということになるでしょう。
万物の根源は火である
ヘラクレイトスは絶えず変化する世界をつなぐロゴスという法則があると考え、万物の根源アルケーは火であると唱えています。すべてのものは火から生まれ火に返っていくと考えたのです。
ヘラクレイトスがアルケーを火とした理由は、火はあらゆるものを焼きつくしても同じ姿を保ち続けるからです。また世界は闘争や対立が繰り返されて変化し続けているとし、その象徴が火であると考えました。そして闘争で何かが失われれば別なところでその反対の何かが生まれ世界は調和すると考えました。世界は変化するからこそ安定もするのだと考えたのです。
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