.Header .description 1-12. 世の中の出来事はすべて筋書き通りか|思考実験の科学史

1-12. 世の中の出来事はすべて筋書き通りか

未来は予測できるのか

 ラプラスは「もしもある瞬間における全ての物質の力学的状態と力を知ることができ、それらのデータを解析できるだけの能力の知性が存在するならば、この知性にとっては不確実なことは何もなくなり、その目には未来も(過去同様に)全て見えているであろう」と述べています。

 このラプラスの言う知性とは人間の能力が及ばないような全知全能なものです。この知性を人類が昔から呼んできた言い方をすれば「神」になるでしょう。古代ギリシアの神々で言はゼウスです。

全知全能の神ゼウス(マールテン・ファン・ヘームスケルク作)
全知全能の神ゼウス(マールテン・ファン・ヘームスケルク作)

科学的な言い方をすれば「物事は自然の法則に従う。人類が未だその法則に気がついていない物事については、人類はその物事の未来を知ることができないだけだ。偶然や確率で決まっているように見えることも未知の法則に従ってそのようになると決まっているのだ。」ということになるでしょう。ラプラスは宇宙に存在する全ての原子の運動と位置を知ることができれば完全に未来を予測することが可能であると考えました。

ラプラスの悪魔

 私たちが知り得る未来は、この宇宙がどのようになるのか、天体の誕生や消滅がどのようになるのかだけではありません。私たち人間や動物の肉体は原子でできています。ですから、私たちの思考や行動さえも未来でどのようになるのかは決まっているのです。すなわち、サイコロやスロットの目がどうなるかという問題だけではなく、コンピュータがランダムに文字列を打ち出して松尾芭蕉の俳句を作り上げること、意思を持たない猿がキーボードを叩いてシェイクスピアを打ち出すこと、意思を持った私たちが何かを考えて行動を起こすことなど、すべてがあらかじめ決まった筋書き通りになることになります。こうした考え方は決定論機械論と言われ、ラプラスが主張する未来を決める知性は後ににラプラスの悪魔と呼ばれるようになりました。

 私たちの身の回りに存在するものや、身の回りで生じる現象の原理や仕組は、科学・技術の発展によってどんどん解明されています。そのような事実から、科学・技術から得られた私たちの知性はラプラスの悪魔に近づいていると言えるかもしれません。

 だからこそ、私たちは科学・技術の発展に大いに期待し、未知の物事が解き明かされたときにたとえ自分が発見したわけではなくても喜びや驚きを感じるのかもしれません。科学・技術の発展によって物事が解明されていくという歴史はこの先もずっと繰り返されるでしょう。


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