.Header .description 2-03. テセウスの船のパラドックス|思考実験の科学史

2-03. テセウスの船のパラドックス

テセウスの船とは

 テセウスの船は最後のギリシア人と呼ばれたローマ帝国のギリシャ人伝記作家・随筆家のプルタルコスが「英雄伝(対比列伝)」に書き記したギリシア神話の伝説です。


テセウスの話は第1巻の最初に掲載されています

 テセウスはギリシア神話に登場するアテナイ(現:アテネ)の伝説的な王で英雄です。アテナイ王アイゲウスとトロイゼーン王女アイトラーの子と伝えられていますが、海神ポセイドーンとアイトラーと子という伝承もあります。テセウスはクレタ島の牛頭人身の怪物ミノタウロスの退治をはじめとする多くの冒険をしました。

プルタルコスとミノタウロスを退治するテセウス
プルタルコス(左)とミノタウロスを退治するテセウス(右)

 テセウスの船は英雄テセウスがミノタウロスを倒した後にアテネの若者とともにクレタ島から帰還したときに乗艦していた船です。アテネの人々はこの船をファレロンのデメトリオス(アテネ周辺の港町ファレオン出身の哲学者デメトリオス・パレレオス 紀元前350~280年)の時代までこの船を保存しました。人々はこの船の朽ちた木材を新しい木材に置き換え船の補修を続けました。やがて全ての部品が新しい部品に置き換えられました。

クレタ島から船で脱出するテセウス
クレタ島から船で脱出するテセウス

テセウスの船の矛盾は何か

 テセウスの船は哲学者の間で万物の根元や真理の追求するうえでかっこうの議論の的となりました。ある者はその船は全て部品が置き換えられのだからもはや元の船と同じものとは言えないと主張し、またある者は部品が全て置き換えられても船は同じものだと主張しました。

 プルタルコスはこの矛盾について船の全ての部品が置き換えられたとき、その船がもとの同じ船と言えるのだろうか、取り除いた元の古い部品から別の船を作った場合、どちらが「テセウスの船」なるのだろうかと認識論を投げかけています。認識論は、知識・認識の本質・起源・根拠などを究明する哲学のことです。


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