.Header .description 2-13. 二分割|ゼノンのパラドックス|思考実験の科学史

2-13. 二分割|ゼノンのパラドックス

二分割とは

 第1のパラドックスの二分割は「動くものは終点に達する前にその半分の地点に達しなければならないので動かない」というものです。

 運動する物体は出発地点から目的地点に到着する前に、その中間地点に達しなければならない。そして、出発地点からその中間地点に到着する前に、そのまた中間地点に達しなければならない。このように物体は無限に存在する中間地点に到達しなければならない。無限に存在する地点を通過するためには、無限の時間がかかるので、有限の時間内に物体は目的地に到達できないし、動き出すこともできない。

 文章だけではわかりにくいのでアキレスに登場してもらって次の図で考えてみしましょう。アキレスが出発地点 A から目的地点 B に移動するにはAB の中間地点である C1 を通過する必要があります。そしてAから C1 に移動するにはAC1の中間地点である C2を通過到達する必要があります。さらにA から C2に移動するにはAC2の中間地点である C3に到達する必要があります。これが永遠に続くことになります。つまりA から B に移動するには無限に存在する地点を有限の時間内に通過しなければなりません。無限に存在する地点を通過するには無限の時間がかかるため、アキレスは出発地点 A から目的地点 B に移動することはできず、出発地 A から動き出すことすらできないことになります。

二分割|ゼノンのパラドックス
二分割|ゼノンのパラドックス

ゼノンの主張

 ゼノンはこのパラドックスにおいて自分が真と考えている「物体は運動しない」をあえて否定し「物体は運動する」を真の命題としています。ここで物体の存在とは物体がある地点に存在することであり、物体の運動とは物体がある地点から別の地点に移動することです。

 ゼノンはこの命題に対し空間は無限に分割できるという仮定を立てました。そして命題と仮定から物体が有限の時間内で無限に存在する地点を通過することは不可能という矛盾を導き出しその結論として物体の運動を否定したのです。

 A と B を結ぶ線分が無限に分割できるという考えは間違いではありません。ですから、A から B に移動する間に無限に存在する地点を通過しなければならないという考えも間違いではありません。しかしながら二分割にはゼノンの主張が成り立たない問題点があります。


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