.Header .description 2-16. アキレスと亀|ゼノンのパラドックス|思考実験の科学史

2-16. アキレスと亀|ゼノンのパラドックス

アキレスの亀とは

 第2のパラドックスのアキレスと亀は、歩みがのろい亀と走るのが速いアキレスが競争するとき、アキレスが亀の後方からスタートすると亀を追い越すことができないというものです。

 アキレスが亀を追い越すにはアキレスは亀の出発地点に達しなければならない。しかし、アキレスが亀の出発地点に達したとき、亀は亀の出発地点より先の地点まで移動している。アキレスが亀を追い越すためにはアキレスは亀が移動した地点に達しなければならない。しかし、亀はさらにその先の地点まで移動する。これは無限に繰り返される。アキレスが亀を追い越すには無限の地点に達しなければならない。これは不可能なためアキレスは亀を追い越せない。

 それでは図で考えてみましょう。アキレスの出発地点を A、亀の出発地点を C1、目的地点を B とします。亀の出発地点 C1はアキレスの出発地点 A と目的地点 B の中間地点とします。そして、アキレスと亀は目的地点 B に向かって同時にスタートします。アキレスの速さは亀の速さの2倍とすると、亀が目盛りを1つ移動する間にアキレスは目盛りを2つ移動します。

アキレスと亀
アキレスと亀

 アキレスが C1 に達すると、亀は 1 と B の中間地点 C 2 に達します。続いてアキレスが C2 に達すると、 亀は C 2と B の中間地点C3に達しています。アキレスが C 3に達したときも同じことが起こり、さらにその先でも同じことが無限に繰り返されます。このようにアキレスは目的地点 B に達するまで無限に生じる地点を通過しなければなりません。したがってアキレスは限りなく亀に近づきますが永久に亀に追いつくことができません。

ゼノンの主張

 ゼノンはこのパラドックスにおいても自分が真と考えている「物体は運動しない」を否定し「物体は運動する」を真の命題とします。そして二分割と同様に空間を無限に分割し、逃げるものを追いかけるものは追い付く前に逃げるものが出発した地点に着かなければならず、その間に逃げるものは先に進んでいると上述の矛盾を示すことによって、物体の運動を否定しています。


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