.Header .description 3-10. 物体の影に回り込む光|思考実験の科学史

3-10. 物体の影に回り込む光

波が広がる現象

 光が波だと考えられた理由のひとつに光が物体の影に回り込む現象があります。波は広がって物体の陰に回り込む性質があります。次の図は水面の波を隙間が開いた板でさえぎったときの様子を示したものです。隙間の大きさが波長よりも十分に大きいとき波はそのまま進みます。しかし、隙間の大きさが波長の数倍ぐらいまで狭くなると波は隙間で広がって進みます。

波の回折現象
波が広がる現象

光の回折の発見

 イタリアの物理学者フランチェスコ・マリア・グリマルディは細い棒に光を当てると棒の影ができる部分に光が回り込む現象を発見し光の研究を重ねました。その研究成果はグリマルディの死後の1665 年に論文「光、色、虹に関する物理・数学的論考」として発表されました。

フランチェスコ・マリア・グリマルディ
フランチェスコ・マリア・グリマルディ

 次の図のグリマルディが実際に行った実験の図です。左の図は小さなスリットABから光を取り込み不透明な棒FEに当てた実験の光の進み方を示したものです。幾何光学的にはFEの影はILになるはずですが、スリットABで光が広がったため影の両端はMとNまで広がっています。このときMCとNDには縞模様が現れたと報告しています。右の図は太陽光を連続する2つのスリットを通過させた実験の光の進み方を示したものです。幾何学的にはNとOの間に光が届くはずですが、光がスリットで広がったためIとKまで届いています。

グリマルディの実験の図
グリマルディの実験の図

 グリマルディはこの現象をいろいろな波の現象と関連づけて考察し光は流体のような動きをするとして回折と名付けました。

ニュートンは光の回折現象を否定した

 ニュートンはグルマルディの論文に対し光は回折しないと反論しています。光が回折することを否定するニュートンなりの考えがあったからです。

 当時、光を研究するうえで比較の対象となっていたのが音でした。ニュートンは音が波であり回折することを知っていました。そして音が物陰から回り込んで聞こえてくるのに対して光は直進して物体の影を明瞭に作ることから、光は音のように物体の陰には回り込まない、つまり回折しないと反論したのです。

光は直進するので物体の明瞭な影を作る
光は直進するので物体の明瞭な影を作る

 ニュートンは光が呈する波のような現象は光線が光の粒子の流れだとしてもそのうちうまい説明が見つかるだろうと考え、光が粒子であるという立場を変えませんでした。


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